Vision-9/防災都市「飯能」から見る、「首都直下地震復興拠点区」としての可能性
2004年に文部科学省地震調査委員会は、30年間で首都直下地震等の発生確率を70%と推定する発表をしました(内閣府,2013,『首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)』8頁)※1。そして、2024年現在、この2004年推定から20年が経過し、残り10年となっています。
※1 文部科学省地震調査研究推進本部地震調査委員会(以下、「地震調査委員会」 という。)(2004)によると、南関東地域でM7クラスの地震が発生する確率は 30 年間 で 70 パーセントと推定されている。
内閣府『首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)』
もちろん、これは推定に過ぎず、いたずらに首都直下地震への不安を煽ることになってはならないのは、言うまでもありません。
しかしながら、我々は、首都直下地震発生を現実的なリスクとして考えるべきです。
そこで、私が、この現実的なリスクに向き合うために、実務家・社会学者として検討した「視点」をまとめたものが「Vision-9:首都直下地震復興拠点区構想」です。
1.防災都市『飯能』の可能性
飯能市公式サイトには、次のように記載されています。
飯能市は、硬質な地盤により地震に対するリスクが低い上、都心から電車で約42分(特急)の始発駅(西武池袋線・飯能駅)を有することから通勤、通学にも便利で、快適で安心・安全、便利なまちです。また、首都圏中央連絡自動車道狭山日高インターチェンジ、青梅インターチェンジからのアクセスも良く企業立地に適したまちです。
引用元:飯能市公式サイト「強固な地盤で地震に強いまち 飯能」(以下の画像も同じ)
地震に強く、都心から好アクセス
飯能市の特性を端的に整理すれば、このようになるでしょう。
しがって、発生が予見されている首都直下地震においては、飯能市をはじめ、入間市、狭山市、日高市、毛呂山町、越生町(衆議院埼玉県第9選挙区)が、首都直下地震復興拠点区としての役割を担えると考えます(首都直下地震復興拠点構想 Vision-9)。
2.内閣府『首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)』を見る
首都直下地震対策検討ワーキンググループは、『首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)』を発表しています。
1.地震の揺れによる被害
(1)揺れによる全壊家屋:約175000棟 建物倒壊による死者:最大 約11000人
(2)揺れによる建物被害に伴う要救助者:最大 約72000人
2.市街地火災の多発と延焼
(1)焼失: 最大 約412000棟、建物倒壊等と合わせ最大 約610000棟
(2)死者: 最大 約 16000人、建物倒壊等と合わせ最大 約 23000人
3.インフラ・ライフライン等の被害と様相
(1)電力:発災直後は約5割の地域で停電。1週間以上不安定な状況が続く。
(2)通信:固定電話・携帯電話とも、輻輳のため、9割の通話規制が1日以上継続。メールは遅配が生じる可能性。
(3)上下水道:都区部で約5割が断水。約1割で下水道の使用ができない。
(4)交通:地下鉄は1週間、私鉄・在来線は1か月程度、開通までに時間を要する可能性。
主要路線の道路啓開には、少なくとも1~2日を要し、その後、緊急交通路として使用。
都区部の一般道はガレキによる狭小、放置車両等の発生で深刻な交通麻痺が発生。
(5)港湾:非耐震岸壁では、多くの施設で機能が確保できなくなり、復旧には数か月を要する。
(6)燃料:油槽所・製油所において備蓄はあるものの、タンクローリーの不足、深刻な交通渋滞等により、非常用発電用の重油を含め、軽油、ガソリン等の消費者への供給が困難となる。
4.経済的被害
(1)建物等の直接被害:約47兆円
(2)生産・サービス低下の被害:約48兆円 合計:約95兆円
以上が、想定される被害概要ですが、上記「図 250mメッシュ別の全壊・焼失棟数(都心南部直下地震、冬夕、風速8m/s)」を見ると、飯能市をはじめ、入間市、狭山市、日高市、毛呂山町、越生町がある9区エリアは、ほぼ全壊・焼失棟数は計上されていません。
つまり、首都直下地震による被害が想定され難い安全な地域であると考えられ、しかも、多大な被害想定される都内から近く、航空自衛隊入間基地(狭山市、入間市)もあり、さらには、人口減等から空家等使用していない建物が多いことから、首都バックアップ機能等を多元的に担えるのが9区エリアと言えるのです。
人口減対策として移住を促進するだけでは、地域に付加価値をつけることはできません。
他の地域とのバランス、そして、自らの地域でしか担えない役割を見出し、それを国レベルで実現していくことが必要です。
3.参考
私は、社会学者として国際津波防災学会に所属し、都市防災に関する論文を発表してきました。